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君は昔から私を探し出すのが上手かった。笑ってる私でものんびりしている私でもなく、誰もいない場所に自ら向い、向かいながら涙で前が見えなくなるから大体ここがどこなのかも分からなくなって、ぽたぽたと落ちてゆくその重みだけを感じては呼吸を放棄している時の私を、いつだって君はすぐに見つけ出した。最初私たちは17歳だった。君は最初から突然わたしのいる場所に来ては、その威力と衝撃でわたしの心はいつだって緩んでただ君が来てくれたその瞬間だけでどこまでも呼吸を忘れては呼吸を必ず取り戻したのだ。

 

24歳の君は変わらずわたしを気にかけていた。ガヤガヤと騒がしくてそれでもどこかその混沌さが自分とは結びつかないような日曜日の混雑した商業施設を君とぼんやり歩いていたら、珍しく声が震えているのは私じゃなくて君のほうだった。「じぶんは、誰かのために生きたい」。横並びに歩きながら正面をぼんやり見つめ、君は珍しく頼りなく震えながらも、確かにたどり着いた最果てのように私にそれを言い切った。

 

その瞬間、私は君が報われる世界を、そんな未来を強く強く願った。それと同時に、君が報われないような未来を打ちつけてくるのがこの世界なら、私はこの世界をどこまでも呪えるだろうと思った。そんな世界なら私は君を連れてどこへだって逃げてしまいたかった。逃げてしまいたかった。逃げてしまいたかった。

 

今日は珍しく、君はわたしを見つけ出さないようだ。

私は、私がいてもいい場所がほしい。

心からほしくてたまらない。

ここにいてくれと、願われる日を思い描くちからすらないけれど。

 

それよりも、君もどこかで春を感じているだろうか。感じてくれていたらいいな。