0301

君は昔から私を探し出すのが上手かった。笑ってる私でものんびりしている私でもなく、誰もいない場所に自ら向い、向かいながら涙で前が見えなくなるから大体ここがどこなのかも分からなくなって、ぽたぽたと落ちてゆくその重みだけを感じては呼吸を放棄している時の私を、いつだって君はすぐに見つけ出した。最初私たちは17歳だった。君は最初から突然わたしのいる場所に来ては、その威力と衝撃でわたしの心はいつだって緩んでただ君が来てくれたその瞬間だけでどこまでも呼吸を忘れては呼吸を必ず取り戻したのだ。

 

24歳の君は変わらずわたしを気にかけていた。ガヤガヤと騒がしくてそれでもどこかその混沌さが自分とは結びつかないような日曜日の混雑した商業施設を君とぼんやり歩いていたら、珍しく声が震えているのは私じゃなくて君のほうだった。「じぶんは、誰かのために生きたい」。横並びに歩きながら正面をぼんやり見つめ、君は珍しく頼りなく震えながらも、確かにたどり着いた最果てのように私にそれを言い切った。

 

その瞬間、私は君が報われる世界を、そんな未来を強く強く願った。それと同時に、君が報われないような未来を打ちつけてくるのがこの世界なら、私はこの世界をどこまでも呪えるだろうと思った。そんな世界なら私は君を連れてどこへだって逃げてしまいたかった。逃げてしまいたかった。逃げてしまいたかった。

 

今日は珍しく、君はわたしを見つけ出さないようだ。

私は、私がいてもいい場所がほしい。

心からほしくてたまらない。

ここにいてくれと、願われる日を思い描くちからすらないけれど。

 

それよりも、君もどこかで春を感じているだろうか。感じてくれていたらいいな。

0224

 

 

闇と瓦礫を掻き分けて

私は君に辿り着いたんだ

 

サンキャッチーの光が部屋中を自由に揺らめく穏やかな昼下がり、鼓膜には私が昔から愛してやまない音楽が君のコンポから届き続けていた。同じ部屋の中、眠たげにしている君は光に包まれていた。君は光やその揺めきを気にしたり、気にしなかったりして気ままに過ごしていた。

そんな幸福を掻き集めたような空間の中に私はいた。サンキャッチーの光の揺めきは優しく私を祝福している。愛してやまない音楽は今もまだ私を見守り続けている。君が眠たげなのは私が作った朝ごはんをお腹いっぱい食べてくれたからだ。そのひと時、光と音と君だけが私の全てだった。彼らがそっと、私の心の臓に優しく触れてくれた気がして目頭がぎゅっと熱くなった。

私は闇と瓦礫を掻き分けて、君に辿り着いたんだ。そしてまた、君とここに辿り着いたんだ。心からそう思った。

そう信じた。

 

 

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0218

全てから逃げて1番どうしようもなかった時、私は横浜のビジネスホテルに4泊泊まっていた。今でもあの時泊まった部屋に戻りたくなる時がある。馴染みのないシースの匂いと擦れる音だけがあの時の私を知っている。歩いてすぐの喫茶店で飲んだロイヤルミルクティーはバチが当たりそうなほど美味しかった。

大好きなアジカンを初めて生で聴けた横浜スタジアムを散歩した。本当に偶然なことに、7年前のちょうど同じ日が公演の日だった。

全てから逃げたはずだったのに、私は全然1人じゃなかった。

ビジネスホテルに逃げ込んだあの4日間は、今では風に吹かれて私からはずいぶん遠い場所に行ってしまったようだった。けれど遠く向こうから、今でも私にささやいてくれる。「大丈夫だよ」と、遠くで声がすることがあるんだ。それは間違いなくあの日々がささやいてくれている。そんな気がするんだ。

 

0119に

最近体のコリをたびたび感じるようになった。ふくらはぎが疲れているし背中は伸びると硬直していたのを感じるほど気持ちの良さがある、昔捻挫した足首は勤務中よくポキポキなるようになった。昨日今日と、湯船に浸かった。久しく湯船に浸かっていなかった、ぼんやり、ぼんやり浸かってみた。

毎日、私を大切にしてあげるのは私の役目だよな。

優しく守ってあげよう、あなたも私も自分を労ろうよ。最近のあなたの暮らしはどうですか?

今度ゆっくり聞かせてよ、いつでもいいからさ。

おやすみ

0722

又吉の劇場が映画化されてアマプラに配信されてたので観た。どうしようもなく好きな雰囲気の映画だった。けど観ていると苦しいから、何度も気軽に観れるものではない。最後、ここでハッピーエンドになったら急につまらなくなることを知っていながらも、どうか、どうか幸せになっておくれと祈っている自分がいた。序盤で主人公が大嫌いだと感じたのに、最後には主人公は痛いほど自分のようで、彼の幸せを願っていた。

夢はなんて残酷だろう、人はなんて脆いだろう。

 

あなたの夢も、私の夢も、身を滅ぼすものになるのでしょうか。

夢がある人、夢が霧の向こうの人は、観てて辛くて痛くてでも大切に感じる物語りだよ。ぜひ観てね、こっそり感想教えてね。

 

おやすみ

0719

今日は一転して幸せに笑っている日だった。仕事はイレギュラーがあっていつもの勤務地ではなく他の県にある工場に行った。冷房のない工場の中で汗水流して働いた後に飲んだお酒、みんな笑ってて美味しかった。お酒の美味しさに味なんて関係ないんだ(と、今は言いたい笑)。「美味しいからほんと、一回食べてみなって!」とのせられて食べたパクチーはやっぱり嫌いで、帰りの電車の中でマスクの中に広がったパクチーの匂いは恨むけど、くすっと笑ってしまうくらいご機嫌だ。今からお気に入りの本を開いたら、きっとあっという間に家に着いてしまうから、どこでもドアなんて一生いらないね。

あなたにもどうか、ささやかな幸せを。笑顔を。

おやすみ。